無料・格安が乱立するオンラインイベント。
参加者を収容するほどの会場が不要とはいえ、講師や登壇者の活用があればもちろんのこと、人件費や撮影器具やスタジオなどに費用はかかっています。リアルイベントよりコストがかかるケースも少なくないのに、価格を上げることが難しいという課題があります。
私は、connecteeというオンラインイベントサービスを運営しておりまして、様々なオンラインイベントやオンラインコンテンツなどを分析してきました。

その結果、オンラインイベントの収益化には、「投げ銭」と「無料体験」というフリーミアムモデル(無料である程度体験したうえで有料課金につなげる)のような仕組みが必要だと考えています。
この理由は3つあります。
- 消費者はオンライン=無料に慣れている
- オンラインだと価値が見えずらいブラックボックスなサービスは売れない
- リアルとオンラインで収益モデルが同じだから比較されてしまう
それでは一つ一つ解説していきます。
① 消費者はオンライン=無料に慣れている
そもそもイベントとは、ECショップと違い、モノではなく、サービスです。
オンラインでサービスというと、例えばブログ、youtube、地図や天気予報、、、など、その多くが無料でサービスを受けられるようになっています。
そのため、消費者は無料サービスに慣れきっています。
そんななか、有料チケットでオンラインイベントを開催したところで、売れにくいのは必然です。
② オンラインだと価値が見えずらいブラックボックスなサービスは売れない
それでも有料サービスで成功している例はありますよね。
例えば、noteもそうですし、スタディサプリ、クックパッドなどです。
このような成功例に共通するのが、「フリーミアムモデル」です。
消費者からすると、無料である程度楽しめるから、失敗がない。
逆に、価値が見えずらいブラックボックスのままだと売れにくいということです。
③ リアルイベントとオンラインイベントの収益モデルが同じだから比較されてしまう
オンラインイベントが安価になってしまう原因は、リアルイベントの収益モデルをオンラインにリプレイスしただけだからだと考えています。
消費者からすると、リアルイベントと比較してしまうから、オンラインイベントは「気軽=安い」なのです。
そのため、同じような売り方をしてしまうとリアルイベントと比較されてしまい、オンラインが劣勢になるのは必然です。
映画に例えるなら、映画館に見に行くのはリアルイベント、Amazonプライムビデオなどオンラインで見れる映画がオンラインイベントです。
映画館は、迫力のある音や映像で楽しめることをわかっているため、先払いでも集客できますが、その価値が減少したAmazonプライムビデオだと、まずは無料体験で集客して、価値を体感してもらい課金しますよね?
「無料で先に価値を体感してもらい、有料にしないとその価値を受けられなくなるよ」、という心理的に感じる損失を利用することで、有料に結びつけているということです。
それなのに、オンラインイベントには無料体験ってないですよね?
noteの有料記事を例にとれば、冒頭が無料で読めるからこそ有料でも続きが読みたいと思えるのであって、最初から全て有料だったら買う人はほとんどいないはずです。
同じように、イベントをオンラインでやる以上、フリーミアムモデルにすることが、今後のオンラインイベントの方向性といえるのではないでしょうか。
以上の理由から、オンラインイベントは、noteのように、無料体験で価値を感じてから課金という流れにしていくべきと考えています。
そして、投げ銭も、ある意味価値を感じてから課金をするという流れなので、広義のフリーミアムといえると思います。
そして、投げ銭機能である「サポート」はオンラインイベントこそ有効です。
これには明確な成功例があります。
オンラインイベントに投げ銭を導入した成功例-1
エンジニアが技術的知見を投稿するZennというブログサービスがあります。
このサービスは、これまでエンジニアが無報酬で技術的知見を共有してきた風習に疑問を感じた開発者の方が始められた、素晴らしいサービスです。
そして、このZennにもnoteと同じく投げ銭機能である「サポート」があります。そして、このZennではサポートの際にバッジを送ることになっています。そのため、バッジの数が多い記事はたくさんのサポートを受けているんだな、と判断できます。
その前提で以下の資料を見てください。

上記は人気記事順に並んでいるのですが、
1番人気な記事は「Zennを支える技術とサービス構成」で、お気に入りが640に対し、バッジの数(サポートを受けた回数)が4つ、
4番目に人気の「Frontend Study #1:基調講演 – Frontend領域を再定義する」が、お気に入り339に対し、バッジが65(サポートを受けた回数)と圧倒的(調べた限りZenn内でもダントツ)です。(2020.12.22時点)
4番目の記事は、オンラインイベント中で資料として使われた記事で、その際にたくさんのサポートがあったようです。
つまり、ブログ系の記事よりもオンラインイベントでの投げ銭の方が圧倒的に有効であるといえます。
オンラインイベントに投げ銭を導入した成功例-2
鹿島アントラーズが行ったオンラインイベントでは、投げ銭機能を活用した5時間のイベントでたくさんの投げ銭が行われたそうです。
詳しくは こちら。
オンラインイベントに無料体験・投げ銭を導入する方法①[connecteeの利用]
手っ取り早く導入する方法は、
手前味噌ではありますが、私が開発したオンラインイベントサービスのconnecteeを利用することです。

このサービスは、ZoomのミーティングURLの送付とかが面倒だなーと思っていたことが開発のきっかけでした。
リアルイベントより手間のかかるケースも多いオンラインイベントが、より安価・無料になってしまっている現状を何とか変えたい、と思ったことからコンセプトが決まりました。
【メリット】オンラインイベントに最適化されているので参加者・開催者ともに楽
【デメリット】ユーザー登録の手間、集客基盤がない
→ちなみにPeatixはチケットなしでのイベント登録も可能なので、集客用にPeatixでのイベント登録を行い、connecteeにリンクを飛ばすことで集客のデメリットはある程度補えます。
オンラインイベントに無料体験・投げ銭を導入する方法②[Peatix + note]
別の方法としては、Peatixでセッションごとにチケットを発行し、無料体験と有料分のそれぞれのZoomミーティングURLを別に発行しておき、イベントの資料はnoteを利用する、という方法です。
【メリット】Peatixとnoteに登録しているユーザーの場合、ユーザー登録の手間がない。
【デメリット】面倒くさい。connecteeのように、参加者に自動的にSNSシェアを呼びかける機能はない。
オンラインイベントの今後
コロナ終息後もオンラインイベントはリアルイベントと並行して開催されると思いますが、参加者の意識はコロナ前と変わり、リアルイベントの味見的な位置づけがオンラインイベントとなっていくのではないかと思っています。
リアルイベントへの参加は移動も含めて時間・金銭的にコストがかかるため、オンラインでまずは様子を見て、良いな、と思ったらリアルも行く、という方が増えると思っています。
また、ビジネスモデルとしての変化も数年経てば見られると思います。
今はイベントごとにチケットを売る形式ですが、サブスクリプションで参加し放題のプラットフォームが出てくるのではないかと思っています。
それこそ映画がDVDとして個々の作品を単品で買う時代から、Amazonプライムビデオのようにサブスク見放題になったように。
妄想ですが、そんな時代が来ると良いな、と思っています。