
・広告始めたんだけど、予算って売上のどのくらいまで使うのが効率的に効果を出せるの?
広告予算を売上の何%と決める方が多いと思いますが、感覚で決めたり、ずっと変えずにそのままだったりする方がほとんどです。
しかし、実際には広告予算が少なすぎることで機会損失につながっていたり、逆に多すぎてムダが生じているケースもあります。
そんな中、科学的に効果的な広告予算の決め方が常識的になっている業界があります。
ベンチャー企業です。
ベンチャー企業/スタートアップ企業とは、ビジネスモデルが確立されていないハイリスクな市場で急成長を求められる企業のことです。
そのため、知らない人からすると意外に思われますが、ベンチャーでは科学的に急成長するための方法論が確立されてきています。
当然のことながら、ムダがなく、最も効果的な広告予算の使い方をしないと資金ショートをしてしまうので、その決め方まで体系化されています。
今回は「ユニットエコノミクス」という考え方について解説していきます。
ベンチャー企業に学ぶ広告の目安予算の決め方
まずベンチャー企業と通常の中小企業の絶対的な違いは、ビジネスモデルが確立されているかどうかという点です。
そのため、ベンチャー企業が成長曲線に入ると、独占又は寡占状態で突き進むため、中小企業の比ではないレベルで売上が上昇します。
逆に中小企業は独占的な市場ではないため、ベンチャー企業ほどの売上の上昇率は見込めないという点が異なります。
広告予算の目安はユニットエコノミクスを参考に決める
そもそもユニットエコノミクスとはベンチャー企業の成長過程のどのあたりで使われる指標なのでしょうか。
ベンチャー企業の創業期以降の成長曲線のうちのいくつかの段階に名前があります。
- ベンチャー企業のサービス・商品が顧客の課題解決に最適化されるプロブレムソリューションフィット
- そのサービスが最適な市場(顧客)に提供できるようになるプロダクトマーケットフィット
- そして、この2つが達成できれば、あとはその市場への認知度を経済合理的に収益性を高めていくユニットエコノミクスの健全化
基本的には成功したベンチャー企業はこの3つの要素を経ていくのですが、中小企業の場合、ビジネスモデルが確立された商品・サービスを扱うため、2のプロダクトマーケットフィットまではすでに検証されていると考えることができます。
そのため、3の経済合理的に収益性を高めるユニットエコノミクスという考え方は中小企業でも扱うことが可能です。
ユニットエコノミクスとは
それではユニットエコノミクスの解説に入ります。
ユニットエコノミクス = 顧客1人あたりの生涯の売上合計額の平均(LTV)÷その顧客1人を獲得するのに要したコスト(CAC)
で表されます。
売上をコストで割っているわけですから、要するに、ユニット(=最小単位)である顧客1人ずつから収益化できているかの指標ということですね。
めちゃくちゃ簡単な例を出せば、
月額10,000円のサービスが平均3年間継続されるようなビジネスがあったとすれば、顧客1人あたり生涯を通して1万円×12×3 = 36万円の売上が立ちます。
その顧客1人あたりを獲得するのに9万円かかるとすると、ユニットエコノミクスは36÷9 = 4となります。
以下が公式です。
- ユニットエコノミクス = LTV/CAC
LTVとは
LTVとは、生涯顧客価値(Customer Lifetime Value)のことです。
要するに顧客1人(社)が総額いくら支払うか、ということです。
LTVの計算方法をカンタンに説明すると以下の式となります。
都度売りビジネスの場合
- 1回あたり購入金額 × 1顧客の平均購入回数
または
- (売上高 – 売上原価) ÷ 購入人数
で計算できます。
※平均購入回数の算出が難しいビジネスも多いと思います。
そのときは業界平均などを調べて算出するのが良いでしょう。
定額系のビジネスの場合
- LTV = 1人あたり月次売上×平均継続月数
または
- LTV = 1人あたり 月次売上 ÷月あたりの解約率
で計算できます。※月ではなく年でも可能です。
もっと厳密な計算方法はありますが、今回の目的は広告予算の目安を出すことなので、あまり気にしすぎない方が良いでしょう。
CACとは
CACとは、 顧客獲得コスト(Customer Acquisition Cost)のことです。
要するに顧客1人確保するのにどれだけのコストをかけるか、ということです。
こちらも計算方法がちゃんとあります。
- CAC=(すべての営業活動費と広告宣伝費)/ 新規顧客数
※原価などは入れません。純粋なセールスとマーケティング費用だけです。
ユニットエコノミクスの目安
ユニットエコノミクス = LTV÷CAC
でしたね。ユニットエコノミクスが1を下回る場合、どんどん赤字になるということです。
一般的な目安は3倍以上です。もし、3倍を下回るような場合は、広告費を下げる必要があります。もしくはLTVを上げる工夫をするかですね。
Payback Periodとは
実はもう一つ指標があります。
Payback Periodは回収期間を意味していて、
- Payback Period = CAC/ 1人あたり月次売上
で計算されます。
要するに、顧客獲得に使ったマーケティング費用をどれだけの期間で回収できるか、といういことです。
こちらは6~12か月が目安とされています(18カ月説もあります。自社に合った方で計算しましょう)。
広告予算の目安をユニットエコノミクスで決める具体例
LTVとCACを計測するためには、数値管理の徹底はもちろん、新規顧客なのかリピーターなのかデータを取っておくことが必要ですね。
現実的にすぐには計測が難しい業界もありますが、取れる限りデータをとりましょう。
それでは以下具体例を考えてみます。
【例】教室系ビジネス
ヨガでもなんでもいいんですが、例えば顧客1人あたり月額1万円、講師人件費5000円、月当たりの平均解約率が1%だったとします。
すると1人あたりの粗利が5000円なので、
LTV = 5000÷0.01 = 50万円となります。
ユニットエコノミクスが3倍以上になるためには、CACは約17万円以下に抑えなければいけません。
例えば新規入会者数が毎月5名だったとすると、営業担当人件費や広告費などは約80万円以内には抑えましょうということです。小規模ビジネスの場合はキャッシュフローの観点から言われるまでもなく達成できるはず、、、。
それではPaybackPeriodの観点で考えるとどうでしょうか。
Payback Preriodを仮に12か月に収めるためには、
CAC = 12か月×月あたり粗利5000円 = 6万円となります。6か月だと3万円までということになりますね。
これだと小規模ビジネスの場合でも考えやすいはずです。
毎月5名の新規入会者数がいれば月あたりの営業・広告予算は15~30万円、最大でも80万円以内には抑えましょう。ということです。
都度売りだとどうしてもLTVが小さくなってしまうので、営業・マーケティングコストをかけづらいこともよくわかると思います。
実際計算するのは面倒です

実際に計算するには資料探しの時点から大変だよ
確かに、面倒ですし、業種によっては資料集めから大変なこともあると思います。
しかし、一度エクセルで計算式を作っておけば、実績数値に応じて簡単に修正できますし、予算管理・数値管理を徹底することで、より少ないコストで最大の成果を出すことが可能になります。
最初の1回だけが大変なので一度やってみることをおすすめいたします。
広告予算の決め方のまとめ
ユニットエコノミクス = LTV/CAC が3倍以上になるように予算を決める
Payback Period = CAC/ 1人あたり月次売上 が6~12か月となるように決める
どちらも満たすことがベストではありますが、ビジネスのステージや規模、業種、利益率により適する数値は異なります。
実際に計算してみて、自社の営業・マーケティングコストが適切か見直してみてください。
ご相談も無料でお応えしますので、不安な方はお声かけください。